魅力のある作品の描き方

IMG201502110101

人気作品の共通点

先が気になる漫画にはある共通点がある。それは、謎に包まれたキャラクターの存在だ。

人気作品には、名前だけが登場して素性が全く明かされないキャラクターが度々出てくる。

実は、大抵の場合に作り手側が意図してこういう要素を取り入れている。

秘密のベールに包まれたキャラクターの存在は、それだけで好奇心が湧いてくるものだ。読み手は、

  • 「どんな能力を持っているんだろう?」
  • 「どれくらい強いんだろう」

といった興味を持ってくれる。

作品に魅力を感じさせ、読者に好奇心を湧き起こして虜にする方法をお教えしよう。

全てのキャラクターを一度に登場させない方がいい

大抵の人気バトルアクション漫画には、カリスマ的に高い戦闘能力を誇る集団がいる。

  • ワンピース ・・・・・・ 七武海、四皇、海軍本部最高戦力3大将
  • ナルト ・・・・・・・・ 暁、五影
  • ハンターハンター ・・・ 幻影旅団、王直属護衛軍

いずれも読者に人気があるものばかりだ。これらの集団に共通していることは、一度に全員で登場していないということである。実はこれが、作品に魅力を感じさせる上でとても重要なことなのだ。

初期のワンピースを例に考えてみよう。

グランドラインに入る前のルフィは、ドンクリークとの戦闘中に鷹の目のミホークに出会った。そのときのミホークの強さが半端ではなかったのである。

巨大戦艦を真っ二つに分断し、当時から強キャラとして怖れられていたゾロを短いナイフ一本で完膚なきまでに倒してしまったのだ。

その後、鷹の目のミホークが七武海の一角であることが分かり、読者はこう思ったはずだ。

あんなヤツがあと6人もいるのか

そうやって、残りの七武海についても興味を持った読者は、先の展開が気になって読み進めてしまうのである。

もちろん七武海は一例であって、ワンピースには続きを読みたくなる仕掛けが随所に散りばめられている(それについてはここでは省略する)。

今でこそ七武海は、メンバーや能力が出揃っているが、未だに根強い人気を保っている。例えば、「七武海 強さ」と検索するだけで様々なサイトがヒットする。

  • 七武海強さランキング
  • 大将VS四皇VS七武海の格付け
  • ワンピースで大将と七武海が同じ強さ?
  • 七武海の強さ順が決定!

これは検索結果のごくごく一部に過ぎない。もちろん議論にのぼるのは七武海だけではない。

作者の尾田先生は、キャラクターに魅力を感じさせるのがとても上手いことが分かるだろう。

さて、もし七武海が一度に全員で登場して、能力も一気にお披露目していたらここまで七武海は人気になっただろうか。おそらく、人気にならないどころか、グランドラインの底が見えてしまい、ワンピースの広大な世界観すらも崩壊してしまっただろう。

全部は出さないのが、魅力的な作品作りのコツなのだ。魅力のない作品は、ここで逆のことをやってしまう。つまり全部を出してしまうわけだ。

例えば、四天王が登場する作品があったとしよう。

上手い作品は、四天王を1人だけ登場させる。その1人が圧倒的な強さを見せることで、残りの四天王の株を上げる。読者は、他の四天王の登場が待ち遠しくなるのだ。

下手な作品は、四天王を一度に全員で登場させる。一人ひとりの顔と名前、能力を全部さらけ出してしまうのだ。読者は、作品の底を見たような気分になってしまい、次第に興味が薄れていく。

出し惜しみもしない

ここで勘違いしてはいけないのは、決して出し惜しみをして良いわけではないということである。

むしろその逆だ。出すときは、最上級のものを出すようにするのだ。こうすれば、出さなかったものまで凄さを感じさせることができる。

ワンピースでいうと、七武海のミホークがその役割を担ってくれた。最高に魅力のあるキャラクターを登場させることで、登場しなかった残りの七武海の株が一気に上がったのだ。

ハンターハンターの幻影旅団も同様だ。ウボォーギンがマフィア集団に1人で突っ込んでくれたおかげで、旅団の凄さが伝わった。結果的に、リーダーのクロロは自身の能力と相まって、人気キャラクターになっている。

>> ハンターハンターのクロロはなぜ人の心を惹きつけるのか

魅力のある作品作りの方法は、魅力のある人になる方法と同じ

魅力の出し方は、何も漫画だけに言えることではない。魅力的な作品を作る方法は、魅力的な人になる方法でもあるのだ。ドイツの哲学者として有名なニーチェは、次のように語っている。

カリスマ性の技術

自分をカリスマ性を持った深みのある人間であるように見せたいなら、一種の暗さ、見えにくさを身につけるようにすればよい。自分をすべてさらけださないように、底が見えないようにするのだ

多くの人は、底が見えないことに一種の神秘性と深さを感じるからだ。自然にある池や沼にしても、濁って底が見えないと人は深いと思って恐れてしまう。カリスマ的人物と呼ばれる人への恐れとは、その程度のものなのだ。

引用:悦ばしき知識

まさに芸能人がやっていることと同じだ。芸能人はカリスマ性を出すのが仕事のようなものであり、一般の人に憧れを抱いてもらうことで商売が成り立っている。特別な存在でなければ、人気になることはできないのだ。

アーティストも同様だ。例えば、今は亡きZARDの坂井泉水さんも、ヒット曲が出てからはメディアにほとんど出演しなかった。それが希少性を感じさせてファンの心を掴んでいた。

見せない部分は消えるのではなく、魅力になって表れるのだ。だから、全部を見せないと損だということにはならない

自ら全てをさらけ出してしまう人は、あっさり底が見えてしまうので、相手から興味を持たれない。つまり、魅力のない人になってしまうのである。魅力のない人は、自分で自分の魅力を無くしてしまっていたのだ。

逆に、自分のことをなんでもかんでも明かさない人は、それが神秘的に映るので、相手から興味を持たれる。つまり、魅力のある人になるのである。

「普段家で何やってるの?」と聞かれるくらいで丁度いい。もしそんなことを聞かれたとすれば、あなたは相手に興味を持ってもらっているし、きっと魅力的な人に違いない。

関連記事

記事はありませんでした

PAGE TOP